2009年通常セミナー



通常セミナーも公開で行います。
場所は基本的に箱崎地区旧工学部3号館4階428(量子生物化学研究室セミナー室)です。
参加される方はあらかじめご連絡いただけると幸いです。


スペシャルなものはこちら

7月22日(木) 13:30-
Replica-exchange molecular dynamics method for protein folding

井手雄治


要旨: タンパク質分子を扱うシミュレーションを行う際、サンプリング効率が大きな問題になる。タンパク質のエネルギー曲面は複雑で無数の極小点をもつため、状態がそれらの極小点にとどまってしまい、広い領域にわたるサンプリングができなくなるのがその原因である。本セミナーでは、この問題を解決する方法のひとつである、レプリカ交換分子動力学法について紹介する。
文献紹介:Y.Sugita,Y.Okamoto Chem.Phys.Lett,314,141(1999)




7月9日(木) 13:30-
エントロピーサンプリング モンテカルロ法

井上仁


要旨: 文献紹介:J. Lee, PRL 71 211 1993




7月2日(木) 13:30-
排除体積効果と溶液内での分子間相互作用
〜4年生向け研究案内〜
秋山良


要旨: 生体分子間の相互作用を考える上で、それらの分子が溶液分子を排除する事で 引き起こされる間接的な相互作用をもはや無視する事は出来ない。この相互作 用を考える事がどの様な広がりを持っているかについて解説する。

今回は新しい話はしません。
電解質中のマクロイオンの間の強い引力相互作用等の新しい話は次回以降にし ます。




6月11日(木) 13:30-
非凖静的過程における仕事と自由エネルギー変化@
〜Jarzynski等式〜
徳永健

文献紹介:C. Jarzynski, Phys.Rev.Lett., 78, 2690 (1997)ほか
要旨: 生体内で引き起こされる非凖静的過程における 自由エネルギー変化と仕事に関するトピックスを、 数回にわたって紹介する。
 今回は、1997年にJarzynskiによって提唱された 「非凖静的過程における自由エネルギー変化と仕事 を関係付ける等式(Jarzynski等式)」を取り上げ、

・Jarzynski等式の導出
・実験的検証
・適用範囲

などを解説する。

===== 以下、予定(もしあれば) =====

非凖静的過程における仕事と自由エネルギー変化A
〜ゆらぎの定理とCrooks関係式〜

非凖静的過程における仕事と自由エネルギー変化B
〜生体分子への適用〜





2007年通常セミナー



通常セミナーも公開で行います。
場所は基本的に319なので、参加される方はあらかじめご連絡いただけると幸いです。

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2月1日(金) 13:30-
リゾチーム結晶の分子間接触構造
成好

文献紹介:H. Oki, Y. Matsuura, H. Komatsu and A. A. Chernov, "Refined structure of orthorhombic lysozyme crystallized at high temperature: correlation between morphology and intermolecular contacts", Acta Cryst., D55, 114 (1999)
要旨:
ニワトリ卵白リゾチーム結晶は、タンパク質結晶成長モデルとして最もよく研究されてきたタンパク質である。 リゾチーム結晶中では、タンパク質分子同士が様々な分子間力を介して接触し、連鎖することで結晶構造を形成している。 この分子間接触部位はマクロボンドと呼ばれている。 結合エネルギーの単純近似によってマクロボンドのエネルギーを見積もることで、結晶の形態の安定性との相関を議論することができる。 今回は、マクロボンドと単純近似によって見積もったマクロボンドエネルギーについて紹介する。 (結晶形態の安定性については触れない。)


10月25日(木) 13:30-
牛乳のカゼインミセルのゲル形成過程
岩下

文献紹介:P. F. Fox, P. L. H. McSweeney, T. M. Cogan and T. P. Guinee, "CHEESE: Chemistry, Physics and Microbiology Third Edition Volume 1 General Aspects", Academic Press (2004)
要旨:
チーズの製造方法は主に、牛乳を酸性化する方法と、牛乳にレンネットを添加する方法の2つが挙げられる。 両者の方法はどちらも、結果的にカゼインタンパク質のミセルが凝集してゲルを形成し、それが収縮してチーズが出来上がる。 今回は、レンネット添加の方法について紹介する。 レンネットとは、酵素であるプロテアーゼの1種である。牛乳にレンネットを添加しても、すぐにミルクは凝固しない。 この間は、酵素がκ-カゼインを加水分解しているのである。 κ-カゼインは、カゼインミセルを安定に保つ働きをしている為、これが加水分解されるとミセルは不安定化して、結果凝集してゲルを形成する。 このゲル形成過程について議論する。 その後起きる、ゲルの収縮によるホエイタンパク質等の追い出し(シネレシス)については今回は触れない。


10月18日(木) 13:30-
2成分混合系の相挙動 ~自由エネルギー計算に基づいた解析法~
藤野

要旨:
私たちを取り巻く環境は種々の物質群により形成され、それらの巨視的構造(相)は熱力学パラメータによって規定される。 相の安定性、平衡を理解する上で、自由エネルギーによる考察は大変重要である。 特に、大きさの異なる2種類の成分を含む系は、直接の引力が働かないような場合でも多様な相の変化を示すことが明らかにされている。
本セミナーでは、大きさの異なる2種類の成分を含む系の自由エネルギーの計算法とその利用について解説する。

(文献M. Dijkstra, J. M. Brader and R. Evans, "Phase behavior and structure of model colloid-polymer mixtures", J. Phys.: Condens. Matter, 11, 10079 (1999), M. Dijkstra, R. van Roij, and R. Evans, "Phase diagram of highly asymmetric binary hard-sphere mixtures", Phys. Rev. E, 59, 5744 (1999)の紹介を兼ねる)


10月11日(木) 13:30-
アルコールによるペプチドのα-ヘリックス形成:きわめて強いフッ化アルコールの効果
成好

論文紹介:D. P. Hong, M. Hoshino, R. Kuboi and Y. Goto, "Clustering of Fluorine-Substituted Alcohols as a Factor Responsible for Their Marked Effects on Proteins and Peptides", J. Am. Chem. Soc., 121, 8427 (1999)
要旨:
いくつかのタンパク質やペプチドの水溶液にアルコールを添加すると、α-ヘリックスの形成が促進される。 α-ヘリックス形成を引き起こす力は、様々なアルコールの中でも特に、TFEやHFIPの効果が著しい。 しかし、その原因は明らかになっていない。
この論文では、水/アルコール混合物中で形成されるアルコールのクラスターに注目し、TFEやHFIPの著しい効果の原因を考える。


7月6日(金) 13:30-
SPTによる実在流体の統計熱力学
小濱

論文紹介: E. Helfand, H. Reiss, H. L. Frisch and J. L. Lebowitz, "Scaled Particle Theory of Fluids", J. Chem. Phys., 33, 1379 (1960)
要旨:
流体の熱力学的性質を予測・計算する方法の一種にSPTがある。 この理論は「λ-cule」と呼ばれる scaled particle を流体中に入れる平均仕事によって特徴付けられる。 今回紹介する論文は剛体球系から実在流体への拡張がメインであるため、λによるスケールとその適用範囲が議論の中心となるが、できる限りその基本となる剛体球系の結果についてもカバーする予定である。


6月15日(金) 13:30-
脂質膜の構造形成に果たす水分子の役割
藤野

論文紹介: M. Castronovo, F. Bano, S. Raugei, D. Scaini, M. Dell'Angela, R. Hudej, L. Casalis and G. Scoles, "Mechanical Stabilization Effect of Water on a Membrane-like System", J. Am. Chem. Soc., 129, 2636 (2007)
要旨:
物理的な力に対する脂質膜の安定性には水分子の存在が深く関与している。 これには、膜構成成分の流動性、親水基の溶媒和などが関係していると考えられる。 筆者らは、親水基の溶媒和の効果のみを露わに取り扱うモデルとして、Au表面に固定された鎖状アルコール分子を用いた解析を行った。 本レビューでは、脂質膜の安定性に水分子がどのように関与しているかについて、彼らの行った実験結果などを交えながら議論する。


6月8日(金) 13:30-
生体反応での活量の計算
狩野

論文紹介: D. Hall and A. P. Minton, "Macromolecular crowding: qualitative and semiqualitative successes, quantitative challenges", Biochim. Biophys. Acta, 1649, 127 (2003)
要旨:
溶液中の平衡定数は各分子の活量で計算される。 例えば会合反応における平衡定数K_{dimerize}は単量体の活量a_{monomer}と二量体の活量a_{dimer}を用いて次式で計算できる。
K_{dimerize}=a_{dimer}/a_{monomer}^2
ところが、生体内における平衡反応では平衡定数は濃度を用いて見積もられてきた。 今回の論文紹介では、論文中で筆者らがどのように活量係数を計算し、活用しているかレビューを行なう。


4月27日(金) 13:30-
会合過程の熱力学 -定積条件下と定圧条件下での観測量の違い-
秋山

要旨:
液体中の会合過程を考える。二量体の安定性は自由エネルギー変化で評価できる。この自由エネルギー変化は、定積条件下ならば、エネルギー変化とエントロピー変化、定圧条件下ならば、エンタルピー変化とエントロピー変化に分割される。これまで、液体中の会合過程に伴うPV仕事は小さいためエネルギー変化とエンタルピー変化は概ね対応していると考えられて来た。しかし、積分方程式理論に基づく自由エネルギー計算と熱力学関係式から得られた結果は、少なくとも上記の対応が自明ではない事を示している。すなわち、相互作用の変化を介して定積過程のエントロピー変化が定圧過程のエンタルピー変化に流れ込む場合がある事を示している。この事は、分子認識などの熱測定結果の解釈を定性的に変化させる可能性がある。例えば、『ある分子認識が定圧下でエンタルピーで駆動されている』という結論が熱測定の結果から得られても、『その認識がリガンドーホスト分子間の直接の引力に基づいている』とは、言えなくなってしまう。また、今回の理解の枠組みは、会合あるいは認識過程で知られている『温度変化に分子間の直接の引力に基づいている』とは、言えなくなってしまう。また、今回の理解の枠組みは、会合あるいは認識過程で知られている『温度変化に伴うエントロピー・エンタルピー競合』を合理的に説明する。当日はこれらの詳細について述べる予定である。
(今回のセミナーは、以下の論文の紹介です。Masahiro Kinoshita, Yuichi Harano, and Ryo Akiyama, Changes in thermodynamic quantities upon contact of two solutesin solvent under isochoric and isobaric conditions, J. Chem. Phys., 125, 244504-1-7 (2006))


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