研究室紹介

研究室

無機・分析化学系

錯体化学(酒井研究室)

生体系の物質変換を担う金属酵素においては、しばしば金属多核錯体が重要な役割を果たしています。当研究室では、複数の金属イオンの組織化がもたらす機能や物性に焦点を絞り研究を行っています。金属間相互作用と化学反応性の相関、光水素発生機能を備えた光分子デバイス、酸素生成機能や二酸化炭素還元機能を示す分子性触媒などが研究対象です。実用可能な機能性金属錯体の開発を目指し、新規多核錯体の合成、構造解析、及び機能評価を進めています。

教育・研究スタッフ
主な研究テーマ
  • 酸素生成反応を駆動する分子性触媒の合成と機能評価
  • 水素生成反応を駆動する分子性触媒の合成と機能評価
  • 二酸化炭素の還元反応を駆動する分子性触媒の合成と機能評価
  • 太陽光を有効利用する分子性光増感剤の合成と機能評価
  • 人工光合成反応を駆動する分子システムの開発と機能評価

錯体物性化学(大場研究室)

金属錯体は、無機-有機複合体の素性を持ち、その構造と性質の多様性が特徴です。この金属錯体を基盤として、バルクスケールの多核金属錯体や金属錯体集合体(配位高分子)の構造の精密解析と物性・機能の評価を通して、構造と物性・機能の相関を解明し、機能性化合物の開発を進めています。また、人工膜や細胞膜の形成するメゾスケール領域を利用して、金属錯体メゾ結晶の制御形成、膜-金属錯体複合体の開発と機能制御を進め、細胞機能制御の実現も目指しています。

教育・研究スタッフ
主な研究テーマ
  • 機能性(磁性、発光性、分子センシング)金属-有機構造体(MOFs)の開発
  • 金属錯体分子を用いたスピン Qubit の開発
  • 金属錯体を基盤とした強誘電材料および固体電解質の開発
  • 金属-有機多面体 (MOP) の集積化による酵素固定化法の開発

生体分析化学(松森研究室)

生体膜は内部器官と外界を仕切る単なる壁でなく、膜タンパク質受容体を介した情報伝達など様々な生理的機能をもっています。特に、薬の多くが膜タンパク質を標的にしていることや、生体膜がアルツハイマー病やウイルス感染など種々の病気の発症に関与することから、生体膜を解析する重要性が増しています。私たちは、最先端の分析化学手法を用いて生体膜の解析を行い、生体膜そのものを理解するとともに、生体膜に作用する薬や生体膜が関与する病気の機構解明を目標にしています。

教育・研究スタッフ
主な研究テーマ
  • 脂質ラフトの阻害/促進解析に基づく麻酔薬・天然有機化合物等の作用機序解明
  • セラミドやDHA等の生理活性脂質・天然有機化合物の作用機序解明
  • 脂質や膜タンパク質を対象とした新規相互作用解析法の開発と新規プローブ探索
  • 脂質膜の分子動態を評価するための新規分析手法の開発
  • キャピラリー電気泳動を用いた超高感度・網羅的バイオ分析法の開発と医療・創薬応用

分光分析化学(恩田研究室)

光を吸収し、エネルギーを手にすることで励起状態となった分子は非常に多彩な機能を示します。分光分析化学研究室では、光化学の分野で励起状態の解析と新たな機能性分子の創出を並行して行える環境を整えています。超短パルスレーザーを用いた最先端の分光分析手段の開発とそれを用いた人工光合成、光触媒、有機エレクトロニクスなどの各種機能物質の動的過程、構造の実時間、分子レベルでの解明を行っています。

教育・研究スタッフ
主な研究テーマ
  • 光化学過程の実時間計測と機構解明
  • 光機能を示す有機集合体の機能発現機構の解明
  • 超短パルスレーザーを利用した新しい励起状態の動的機能解析装置の構築
  • 典型元素を利用した新しい機能性錯体材料の創出

無機反応化学(宇都宮研究室)

私たちは、地球をよく観察し、自然界でおこっている未だ知られていない無機反応を探索し、反応機構を解明することを研究の目的としています。その意義は、地球をシステムとして理解するための新しい情報提供と言えます。さらに、その反応の中で合理的な反応を化学工業へ展開することも志向しています。

教育・研究スタッフ
主な研究テーマ
  • 福島第一原発災害に関する環境調査研究
  • 福島第一原発災害時の放射性粒子が絡んだ反応メカニズムの解明
  • 人形峠ウラン鉱山汚染の様々な環境問題の理解

物理化学系

分散系物理化学(安中研究室)

ゲルは生活の中にたくさん見つけることができます。ゼリー、寒天、豆腐...これだけではありません。実は体の中の至る所に存在して、私たちの生命活動の維持に役立っています。例えば、目の組織である水晶体、角膜、硝子体がその例です。私たちはこの「ゲル」という物質を通して、生命の原理に近づこうと研究を進めています。

教育・研究スタッフ
主な研究テーマ
  • 両親媒性高分子・高分子ゲルの構造・物性・機能
  • 生体由来高分子ゲルの構造・物性
  • 高分子ゲルの滑り摩擦

理論化学(中野研究室)

分子のように小さな世界では、第一原理に基づいた基礎方程式を具体的に書くことができます。また、実際にこの方程式を良い精度で数値的に解くこともできます。理論化学研究室では、これらの方程式の解法を探り、化学反応をはじめ、化学現象の多様な世界を理論的に明らかにしようとしています。

教育・研究スタッフ
主な研究テーマ
  • 分子の複雑な(多配置)電子状態に関する理論の研究
  • 相対論効果を含む精密な電子状態に関する理論の研究
  • 電子状態理論に基づく分子の機能の解明と設計
  • 溶液系のダイナミクスシミュレーション手法の開発と応用
  • 化学計算に向けた量子コンピューティングアルゴリズムの研究

量子化学(寺嵜研究室)

数個から数百個の金属原子の微小集合体「金属クラスター」に着目し、現状のナノテクノロジーを凌ぐ究極のナノ物質科学の開拓に向けて、その基礎研究に取り組んでいます。構成原子数の増減で物性や反応性が不規則かつ劇的に変化する特有の現象を、原子1個を見分ける質量分析法、時々刻々の反応の進行を捉える化学反応追跡法、物性を担う電子の特性を捉えるレーザー分光法・光電子画像分光法など、最先端の実験技術を駆使して探究しています。一方、真空中で液体を扱う技術を開発し、気相化学と液相化学とを融合する新分野の開拓にも挑んでいます。

教育・研究スタッフ
主な研究テーマ
  • 構造の研究:単純に固体金属を切り出した構造なのか?
  • 電子の研究:どんな電子殻が形成されるのか?
  • 反応性の研究:不活性な金属も小さくなると高活性?
  • 原子の数や元素の組合せによって、性質はどう変わる?
  • 真空中の液体研究:水滴は何秒で凍る? 何度で凍る?

構造化学(大橋研究室)

水蒸気を冷却していくと液体の水になり、やがて固体の氷になるのは、水分子の間に「分子間力」が働くためです。分子間力をミクロのレベルで研究するためには、分子が数個から数百個集まった「クラスター」と呼ばれる集団を取り出して、その分子間に働く力を調べるのが理想的です。我々のグループでは、有機分子や金属原子のイオンが溶媒分子に取り囲まれてできる「クラスターイオン」を取り扱っています。分光実験と理論計算の手法を使って、イオンを取り囲む溶媒分子のミクロ構造やイオン–溶媒分子間の相互作用を分子レベルで解明することを目指して研究しています。

教育・研究スタッフ
主な研究テーマ
  • 生体関連分子と金属イオンの相互作用に関する研究
  • 溶質分子が周りの溶媒から受ける影響に関する研究
  • 光を吸収した分子が起こす様々な反応に関する研究

光物理化学(平松研究室)

私たちの研究室では、光と分子との相互作用、特に非線形ラマン散乱という非線形光学現象を用いることで、“分子の指紋”を用いた新しい細胞・生体組織イメージング手法の開発を行っています。病理診断、疾患診断などの医療応用が、研究ターゲットの一つです。

教育・研究スタッフ
主な研究テーマ
  • 非線形光学過程を用いた分子イメージング法の開発
  • 超多色イメージング法の開発と超解像イメージングへの応用
  • 分光イメージングのビッグデータ解析による生命機能の解明
  • 光コンピューティングを用いた超高速画像解析
  • 簡便なRNAウイルス検出法の開発

有機・生物化学系

触媒有機化学(徳永研究室)

触媒反応は医薬品合成から石油化学プロセスまで、効率的な物質変換を可能にすることで私たちの日常生活の多くの側面で不可欠な役割を果たしています。
当研究室では、水や酸素、水素、硫黄など、単純反応剤を駆使した固体触媒反応を中心に、より効率的で環境にやさしい反応開発を目標に研究を進めています。
有機合成化学者によく使われてきた金属錯体触媒・有機分子触媒に加え、固体触媒を用いた石油化学プロセス反応の研究も行っています。

教育・研究スタッフ
主な研究テーマ
  • 有機分子触媒を用いた不斉反応
  • 固体金属触媒を用いた硫黄化合物の新合成法
  • 担持金ナノ粒子の実用的な新規調製法
  • 不均一系金属触媒と単純反応剤を用いた実用的な酸化・還元反応
  • 酒類からの新しい選択的脱硫法

生物有機化学(大石研究室)

動植物や微生物から単離された有機化合物の中には、生体膜や特定のタンパク質に作用して強力な生物活性を示す物質が存在し、抗生物質や制癌剤として利用されています。これらの化学物質が活性を発現する原理を明らかにすることによって、新しい薬剤の設計・合成に取組んでいます。

教育・研究スタッフ
主な研究テーマ
  • 梯子状ポリエーテル天然物の化学合成・構造決定・作用機構の解明
  • 抗真菌活性・抗がん活性を有する天然物の全合成と構造活性相関研究
  • 効率的合成法の開発と天然物合成への応用

動的生命化学(堀研究室)

本研究室では、化学の原理を考案・応用することで、合成蛍光分子でタンパク質を化学標識・可視化するケミカルバイオロジーの技術を開発しています。この技術を用いて、生きた細胞の中でタンパク質がいかにして動き、生命現象を制御しているかを明らかにします。さらには、化学標識技術を駆使して、タンパク質に加え、核酸や糖鎖の制御する生命現象を解明するとともに、生体分子と細胞の機能を自在に制御することを目指しています。

教育・研究スタッフ
主な研究テーマ
  • PYPタグと合成蛍光プローブを用いたタンパク質ラベル化技術の開発
  • タンパク質ラベル化技術によるGLUT4の動態制御機構の解明
  • タンパク質の分解を可視化する蛍光プローブの開発
  • ハイブリッドプローブによる核酸修飾の可視化
  • 超解像イメージングを志向した蛍光スイッチングプローブの開発

量子生物化学(秋山研究室)

生体での化学反応の主役は、タンパク質などの生体高分子です。しかし、その主役たちは「適切な溶媒」という重要な脇役があってはじめて本来の機能を発揮できます。例えば、胃の中のペプシンという蛋白質は酸性の胃液の中でこそ酵素として働きます。そうした脇役=溶媒たちの作る魅力的なサイドストーリーを理論的側面から発掘することが本研究の目標です。

教育・研究スタッフ
主な研究テーマ
  • 電解質溶液中の同符号電荷間に働く強い引力相互作用とその濃度依存性が示すリエントラント挙動の統計力学に基づく研究
  • 粒子の配置エントロピーが駆動する引力相互作用を利用した分離挙動の研究
  • 生体分子の拡散現象が示すストークスーアインシュタインの式からの大きなずれについてのシミュレーション研究
  • 自己駆動粒子のシミュレーション研究

構造機能生化学(松島研究室)

生体内のシグナル伝達分子と、それらが結合するタンパク質受容体の相互作用メカニズムを解明しています。私たちの主な研究対象は、女性ホルモン受容体をはじめとする核内受容体です。核内受容体は、細胞核内で標的遺伝子の転写を制御しています。G タンパク質共役型受容体 (GPCR) である痛みに関わるオピオイド受容体と、これらに結合するペプチドに関する研究も行っています。転写制御による痛みの新しい制御法を目指しています。

教育・研究スタッフ
主な研究テーマ
  • 環境科学:環境化学物質と受容体の構造機能相関
  • 受容体化学:核内受容体および神経ペプチド受容体の構造機能解析
  • 脳神経化学:化学物質暴露による行動への影響解析

協力講座|先導物質化学研究所

ナノ物性化学(玉田研究室)

金属・酸化物・半導体・ソフトマテリアルなどの異種ナノ材料接合界面における局所的な相互作用や協同現象の解明と そのデバイス応用について研究します。分子・ナノ材料の次元構造を自己組織化により制御し、 これまでにない新しい物性を引き出すことで、バイオセンシングやグリーンデバイスなど応用研究に直結する 斬新な基礎研究を展開します。

教育・研究スタッフ
主な研究テーマ

光機能物質化学(佐藤研究室)

分子デバイスの開発を目指し、特異な光、磁気、電子機能を有する新物質の合成と物性の解明を行っています。特に、光磁性体に代表されるような、外場(光、電場等)に応答し巨大な物性変化・スイッチング特性を示す金属錯体・分子結晶の開発を進めています。

教育・研究スタッフ
主な研究テーマ

ナノ機能化学(山内研究室)

持続可能な社会を実現するには、エネルギーおよび物質を効率よく変換する触媒機能を活用する必要があります。私たちはナノメートルスケールの微小な固体のサイズ、形状、組成を制御することにより、高い活性を示す新触媒の開発を行います。また、磁性、ガス吸蔵、イオン・原子輸送などの機能性を有する新規ナノスケール材料を作製します。

教育・研究スタッフ
主な研究テーマ

構造有機化学(谷研究室)

芳香族から反芳香族に至るπ電子系は、独特の電子的性質や光物理的性質を示します。このようなπ電子系を含む、構造的、理論的、物性的に興味の持たれる新しい有機分子を創り、それらの構造と物性の相関関係を調べています。また、これらの分子と他の分子との弱い相互作用(電荷移動、水素結合、疎水性等)に基づく集合体形成(溶液、固体)の原理についても調べています。新しく合成した有機分子やそれらの集合体が有機機能性材料として社会の役に立つことを目指して研究を進めています。

教育・研究スタッフ
主な研究テーマ

協力講座|基幹教育院

ソフト界面化学(瀧上研究室)

空気と水、油と水が接してできる界面や脂質二分子膜などの柔らかい界面(ソフト界面)膜は、泡、エマルション、生体膜などのソフトマターの基本骨格となっており、食品、化粧品、医薬品などの様々分野に応用されています。私達の研究室では、ソフトマターの機能と構造の相関解明・制御を目指して、「コロイド・界面科学」の立場から研究を展開しています。

教育・研究スタッフ
主な研究テーマ

生体分子化学(野瀬研究室)

生命現象はさまざまな生理活性や分子構造を持つ生体分子により担われていますが、自由にそのような分子をデザインできると面白いですね。そこで私たちは、生命現象を解析する研究手法、特に、化学合成、立体構造解析、活性測定、計算科学などを用いて、生体分子の構造を予測して面白い構造を持った分子を作り出したり、新奇な活性を生み出したりするにはどうしたらよいだろうか、という課題に関した研究に取り組んでいます。

教育・研究スタッフ
主な研究テーマ

有機反応化学(内田研究室)

生体内では、酵素と呼ばれる触媒を用いて、必要な化合物のみが効率よく合成されています。私たちは、同様の効率を、酵素反応とは異なる機構で実現し得る触媒の開発を行っています。これらの触媒を利用して、必要最小限の資源とエネルギーを用い、目的化合物のみを与える環境に優しい合成法の開拓を行います。

教育・研究スタッフ
主な研究テーマ

協力講座|アイソトープ統合安全管理センター

放射化学(立花研究室)

オゾンの反応性に関する体系化研究の他に、リチウム、モリブデン、ウラン等の元素分離法、同位体分離・濃縮法及びそれらの同位体比の高精度測定法を開発するための基礎・応用研究を行っています。特に同位体分離・濃縮研究では、「原子核の重さや体積などの違いが化学反応に与える影響を調べる」という極めて基礎科学的な着想に基づいていますが、これらの研究成果は原子力分野のフロントエンド、原子炉水化学、核医学など様々な分野で役立つことが期待されています。

教育・研究スタッフ
主な研究テーマ
  • オゾン化学:オゾンと放射性物質を含む有機あるいは無機化合物との間の反応性に関する体系化研究と予測モデルの構築
  • 元素分離化学:環境水中における放射性物質の吸着脱離機構に関する速度論及び平衡論的研究と分離回収技術への応用展開
  • 同位体分離化学:イオン交換反応中における同位体濃縮効率因子の体系化研究と全自動濃縮装置の開発